「この薬の副作用は少ないですか?」
「はい,少ないです。」
「でも,この副作用は多いですよね?」
「はい,その副作用は多いです。」
日常的には,こういう会話が
よく聞かれますよね。
でも,この会話って
とっても危なっかしい会話なんです。
なぜかわかりますか?
そうです。
「多い」「少ない」
この言葉の定義が
まったくわからないからです。
「多い」「少ない」の定義・基準は?
「多い」,「少ない」というのは
何か基準というものがなければなりません。
あるいは比較になるものですね。
副作用が100例に1例出た薬
副作用が1000例に1例出た薬
どちらが副作用が多いか?
これなら,100例に1例の方が多くて
1000例に1例の方が少ない,
これは誰が考えてもそうです。
しかし,何も基準がなくて
1000例に1例副作用が出た薬がある
この副作用は多いか?少ないか?
そう尋ねられたら,
あなたはどう答えますか?
「多い」「少ない」は比べるものが必要
1万例に1例,副作用が出る薬に比べたら
1000例に1例,副作用が出る薬は
副作用は10倍出やすいと言えます。
逆に100例に1例,副作用が出る薬に比べたら
副作用は10倍出にくい薬と言えます。
なので,ある人が,
なんの前提条件もなしに
「この薬は副作用が少ない!」
なんて言っていたら,
その人は怪しいと思った方がいいですね。
逆に,この薬の副作用は
1000例使えば1例でる程度です。
という人があれば,
この人は信用してもよいと思います。
事実しか述べていないわけですから。
少なくとも,人の注意をひく
大げさな形容詞だけ使う人は
気を付けた方がいいですね。
大げさな形容詞には要注意
たとえば,何の前提もない
「非常に多い」「非常に少ない」
というような表現ですね。
もっとあやしいのは
「莫大な」とか「膨大な」とか
「究極の」とか「破格の」とか
そういう大げさな形容詞(飾り言葉)ですね。
そういう言葉を
平気で使う人には要注意です。
そういう人達は,たいていの場合,
あおっているだけのことが多いです。
現実には取るに足りない小さなことを
ものすごく大きなことのようにあおります。
一種の誇大広告ですね。
そういう人達は,こちらから,
「具体的にはどのくらい?
それは何例中,何例で起きている?
数字で示してください。」
と質問すると,口ごもってしまう
あるいは質問をすりかえてしまう,
そんな人が多いようです。
誇大広告をする人には要注意
テレビの薬の副作用関係のニュースでは
このような客観的な数字は
あまりでてきませんね。
「何例に重篤な副作用が出た!」
というような形で報道がされますが,
何例使ったうちの何例というような
正確な表現はあまりありません。
100万例使う薬と,1000例使う薬では
同じ比率で副作用が出るとしても
実際に出る副作用の数は違いますよね。
たいていの報道のパターンは,
実際に副作用が出た人の
現在のきびしい状況を映し出して,
「その薬はこんなに危険だ」
と強調するようなやり方です。
薬が危険であることを印象づける
たしかに副作用が発生してしまった
患者さんにとっては,
何例使ったら何例発生するというような
情報は意味がありません。
全体がどうであれ,
その人にとっては100%だったわけです。
それは十分に考えていかなければなりません。
ただ,それと,その薬の
客観的な安全性のデータとは
少し意味合いが異なります。
個々の事例と全体の問題はちがう
副作用がない薬はありません。
薬を服用するということは
リスクも同時に引き受けると
いうことが大前提です。
ものすごくまれな
副作用の1例を取り上げて
それがすべての患者さんで
起きるかもしれない
そういう報道のされ方が
多いのが気になります。
具体的なデータなしに
特定の印象だけを
見ている人に与えるような
そういう報道は危険だなと思います。
テレビのニュースでも
特にコメンテーターと言う人達の発言に,
そういうデータなしの発言が
多いような印象がありますね。
コメンテーターの発現も要注意
あっ,すみません,
「発言が多い」といいましたが
具体的にデータはとってません。
上記の「発言が多い」というのは
自分がテレビを見ている範囲の話です。
私が見ているテレビの
コメンテーターの人たちは,
基準を示さずに,ある出来事について
「多い」とか「少ない」とか
発言する人が多い,
そういう意味ですね。
そういう目で,新聞の社説や
テレビのニュースやコメントを
聞いていると面白いと思います。
誰が,具体的にデータを示しているか
誰が,印象だけでしゃべっているか?
よくわかると思います。
ということで,きょうは,
「多い」,「少ない」
についてでした。
今日も,最後までお読みいただき
ありがとうございました。
ムッシュスカラー
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