「勝って兜(かぶと)の緒を締めよ」
戦(いくさ)に勝った時に、
兜の緒(兜についているひも)を
しっかりと締めて気を抜かないようにせよ、
という意味合いのことわざですね。
その背景には、昔からの
現実の戦(いくさ)、戦争の
厳しさというのがありますね。
アニメ「キングダム」
をはじめとする歴史物語で、
必ずといっていいほど、
でてくる場面があります。
それはどういう場面かというと、
有能な武将や軍師が、
初戦でわざと負けるという場面です。
初戦でわざと負ける
初戦でわざと負けることで
相手の気を緩ませ、
油断した相手を死地に誘導し
相手に隙ができた時に、
一気に攻めに転じて、相手をせん滅する
そんな戦い方ですね。
そういうマンガや小説を
読むたびに思うのは、
「昔から、人間の心理というのは
変わっていないのだなあ」
ということです。
これは何も、相手(敵)がある
戦争の場合に限りません。
たとえ、相手(敵)がいなくて、
ひとりで何かをする場合であっても、
何かひとつ大きな目標を達成した後
そういう時が、一番危険な時です。
目標達成の後が一番危ない
何か大きな目標に向けて
ひたすら頑張っている時というのは、
自分自身に対しても、
割と厳しく目を向けることができます。
というか、そのくらいしないと
なかなか大きな目標を
達成するのは難しいです。
で、本当に夢中で、がんばった結果として
「やった。ついに達成した!」
そういう最良の時、最高の時
というのがありますね。
たとえば、
受験生が、目標の学校に合格した時
就活で、目標の会社に内定をもらった時
仕事で取り組んでいたプロジェクトが成功した時
そのような最高の時のあとが
一番危ないということです。
最高の時の後が一番危ない
大きな目標を達成し、
喜びに浸っていた人が
そのあとダメになっていくパターンですね。
本当にたくさんありますね。
というか、ほとんどそのパターンです。
逆に、そこからさらに飛躍していく人
そういう人は、圧倒的に少ないです。
なかなか伸び続けるのは難しいです。
どんどん伸びていく人というのは
「勝って兜の緒を締めよ」
のことわざどおり、気を緩めずに、
最良の時にこそ、最悪の場合を想定して
どんどん手を打っている人ということです。
「とにかく、うまくいっているんだから
今までどおりやっていけばいい」
ということも、もちろんゼロではないです。
ですが、それだけでは足りないということです。
今まで通りでは足りない
これは、誰でもそうですが、
「『絶好調』が、一生続く。」
なんてことはありません。
当然、「不調」の時もあるし、
「絶不調」の時もあります。
それに、世の中、
自分の都合だけでは回っていません。
自分にとって
都合のよい環境に変化する場合もあれば
自分にとって
都合の悪い環境に変化する場合もあります。
未来のことを、考える時に、
大きな成功をした後というのは。
とかく「この成功がずっと続く。」
なんてことを考えがちです。
この成功がずっと続く…?
そして、
「周りの環境もこれまでと同じように
自分にとって都合のよいように動き続ける。」
と考えてしまいがちです。
もちろん、そのまま
自分の都合のよいように動く場合もあります。
それならそれでいいわけですが、
もし、自分にとって都合の悪い方向に動いたとしても
それでも、何とか生きていける状況を作る。
つまり、最良の時にこそ、冷静に考えて、
最悪の場合に対応できる手を打っておく、
それが、この世界で、
末長く健全に生きていくための
確かな方法なのかなと思います。
自分も含めて、たいていの人は
調子が悪い時には、
けっこういろいろと考えて
普段よりも、努力というものを
多めにしますよね。
調子が悪い時は頑張れる
でも、大きな成果が出たあとは
どうでしょうか?
それまでと同じ量の努力を
続けられるでしょうか?
そんな時に、普段の自分よりも、
多めの努力を続けるというのは
なかなか、難しいことです。
くわえて、世間というのは厳しいです。
自分が成功したということになれば、
まわりは、その成功を見ているわけです。
良いことは必ず真似をされますね。
なので、これまでと同じことを
同じようにしていたとしても
同じ成果を上げることが
だんだん難しくなっていきます。
同じ努力で同じ成果を上げにくくなる
なら、どうするかといえば、
成果が出た時、つまり最良の時に、
世間に追いつかれないように
ただちに手を打っていくということです。
それが昔からあることわざの
「勝って兜の緒を締めよ」
ということなのだと思います。
組織に所属してチームで
成果を出した場合などは、
みんなが喜んでいる時に
最悪の場合を想定して手を打つというのは
話を出すだけでも難しいですよね。
でも、成功し続けるためには、
必要なことなのだろうと思います。
もちろん、100ゼロではありません。
もちろん、これもバランスが大事です。
あまり極端に考えると
いろいろと難しくなります。
「大きな成果が出ているのに、
まったくよろこんではいけない。」
ということではありません。
「喜びすぎて、リスクのことを忘れてしまう。」
それがまずいという話です。
もし、あなたが、
「今、とてもいい感じ、成果が出ている!」
そんな時には、
「勝って兜の緒を締めよ」
一度は、思い出してほしいことわざです。
ムッシュスカラー
PS:「こういう話はよく聞く話で、耳にタコができている」なんて思ってしまいがちですね。でも、「言うは易く、行うは難し」という言葉もあります。自分も含めて。わかっていても、なかなか実行できない、そんなお話だと思います。