「子孝行」という言葉

「子孝行」という言葉があります。
おそらく、世間一般で
使われている言葉ではなくて、
私の母が言った言葉です。

私の妻のお母さん、
つまり、私の義理の母が
血栓症で急死された時に、
私の母が、私と、私の妻に向けて
言った言葉です。

「K子(義理の母)さんは、『子孝行』やな。
子供たちに、世話をかけることなしに
あっという間に、逝ったなあ。」

その時には、それ以上詳しい話は
しなかったのですが、
そのニュアンスは理解できました。

亡くなった私の父もそうでしたが、
私の母は、子供たち、孫たちの
世話をすることは大好きです。

でも、その一方で、
「子供たちの世話になるのは申し訳ない」
「子供たちに迷惑をかけるのは申し訳ない」
そんな気持ちを強く持っています。

それは、子が親を思う
「親孝行」の気持ちよりも
おそらく桁違いの強い気持ちです。

子を思う親の気持ちは桁違い

もちろん、個人差があるので、
全ての親がそうであるとか
どのくらい、そのことを考えているかとか
それは、全くわかりません。

でも、おそらくですが、
子供というのは、親の考えていることは、
何もわかっていないのだろうと思います。

今、自分が親の立場になってみて、
ようやく、生前の父の気持ちというのが
すこしだけですが、わかったような
つもりになっています。

これも、「わかったつもり」というだけで、
本当に、父が考えていたことの
ほんの一部に過ぎないかもしれません。

親の気持ちを子供はわからない

それくらい、親が子供を思う気持ち
この気持ちというのは
強いというか、大きいのだろうと思います。

さらに言えば、よく世間で言われている
「子供のことが心配で、気になって」
ということも、もちろんあるのでしょうが、
それよりも、むしろ、

「子供たちの足を引っ張ってはいけない」、
「子供たちに世話をかけてはいけない」、

こちらの気持ちの方が強い場合もある、
というのが、真実のようです。

現在、私たち夫婦の両親のうち、
存命なのは、私の母だけです。

母は、4年くらい前から
介護施設に入所中ですが、
面会の度に、
「ほんまにすまんなあ。
世話をかけてすまんなあ。」
とそればっかりです。

「ほんまにすまんなあ。」

「なに、言うてんの。
年を取ったら、誰でも不自由になるよ。
子供が親の世話をするのは、当たり前やん。
それに、実際は、私たちの代わりに、
施設のスタッフのみなさんが
何から何までやってくれているんやから、
こちらこそ、申し訳ないわ。」

という話をすると、決まって、

「お金は大丈夫なん?」

と聞かれます。

「もちろん、お母さんの年金で十分足りてるよ。
私らが、お金を追加で出すことはないから。
大丈夫、お金のことは心配せんでええよ。」

と事実を伝えます。すると、

「ほんまか?」

と念押しをするので、

「ほんま、ほんま。」

と、こんな会話を、面会の度に
繰り返している感じです。

「子供たちに迷惑をかけていないか」

今も、母は、
「子供たちに迷惑をかけていないか」
そればっかり気にしているようです。

こういうのは、理屈ではなくて、
自然と湧いてくる感情のようです。
それも、その人の遺伝の中に
あるものなんでしょうね。

遺伝だとすれば、みんな違いますから
みんながみんな同じようには
考えないのでしょうね。

そのあたりは、
正直、よくわかりません。
私には、見当もつきません。

でも、親が子を思う気持ちというのは
親であれば、まず例外なく、
持っている気持ちだと思います。

親なら例外なく持っている気持ち

ただ、それに見合うだけの
親を思う気持ちを、子供の側が
持っているかと言えば、
それは、どうなんでしょうか?
私など、まったく自信がありません。

ただ、最近の母の状況を見ながら
ちょっと遅すぎる感はありますが、
今からでも出来る限りのことは
していこうと思います。

また、これは、おそらく
両親の思いと同じだと思いますが、
「子供たちの足を引っ張らないようにすること。」
今、自分が親の立場として、
かつての両親と同じように感じています。

そこで、今の自分にとって
何が一番重要かと言えば、
それは、生きている間は、
健康で元気でいることです。

健康で元気でいることが何より

健康で元気であれば、
子供たちにとって、それが何よりです。
親の心配をしなくてもすみます。
それが何より大きいですね。

幸い、現時点では、私たち夫婦は、
大きな病気はなくて、
何とか、健康に毎日の生活を
送ることが出来ています。

出来る限り、この健康な生活を
それこそ死ぬ間際まで
続けていくこと、
それが、母のいう「子孝行」に
あたるのかなと思います。

『親孝行』はもちろんですが、
『子孝行』も大切なことだと思います。

 

ムッシュスカラー

 

PS:親が子供に与える影響というのは、本当に大きいです。親の調子が悪いと、何かしら子供にも悪い影響を与えてしまうようです。健康以外でも、気を付けていきたいと思います。

PPS:年を取って身体が不自由になってからの親の姿というのは、遺伝から考えて、かなり高い確率で、自分の将来の姿ということです。年齢を重ねると、「あれ、これは親に似てきたなあ」といろいろな時に感じます。将来、親と同じような状況になること、その可能性が高いことは覚悟する必要がありますね。そして、そのうえで、もし、親よりもよくなるように、改善できることがあるなら、今から、改善していくのがいいですよね。

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