先日のブログでも書きましたが,私が小学生の頃は,田舎に住んでいました。それで,一緒に小学校に通っていた仲間たちと,近くのみかん山の中を走り回っていました。(ちなみに冒頭の写真はみかん山ではありません。)
当時のみかん山というのは,特別に柵や囲いがあるわけではなかったと思います。いや,もしかして柵や囲いがあったのかもしれませんが,私たちが走り回っていたみかん山にはそんなものはありませんでした。
で,子供たちが,みかん山の中を,自由に走り回っていても,別に誰にもとがめられたりはしませんでした。もちろん,みかんを勝手に取って食べたりしたら,それはダメです。売り物ですからね。そのあたりは,子供ですが,わきまえてました。勝手に取って食べたりなんてしませんでしたよ。そんなことよりも、ただひたすら走り回っていたという感じでした。
ただひたすら走り回る
そんなみかん山のそばには,ところどころ危険な場所もありましたよ。たとえば,みかん山のいただきのところから、急にがけになっているところとか,川になっているところとかありました。もちろん、たいていは、立て看板や鉄条網があったりしたのですが、あっちこっち穴が開いていたりして、まあ適当な感じでしたね。
また,そんな川の近くには,畜産で牛を飼っている牛舎がありました。そこの持ち主が友達の親戚ということで、たまに、しぼりたての牛乳を飲ませてもらったりもしましたね。
畜産の牛舎
で、その牛舎の近くにも川がありました。そんなに大きくはない川でしたが、その川がカーブしているところの内側ですね。そこが問題だったんです。
当然、内側は流れが遅くなるので、上流からの砂や泥がたまりますね。そこに、牛糞が泥と一緒にたまっているところがあったんですよね。見た目は、それとはわかりません。その場所は、普通の土と同じ色でした。
で,川の近くの道を歩いていた時のことです。まあ、道といっても草むらの中を人が通るので、草が少なくなって土が見えている程度の道です。まあ、けものみちというような感じの道です。そこで、ちょっと近道をしようとして、その牛糞だまりに足を踏み入れてしまったことが何度かありました。
牛糞だまりにズボッ
周りは普段歩いている道ですから、踏み固められていて、わりとしっかりとしていたんです。ところが、その牛糞だまりは本当に沼のようでした。
ズボズボスボッと,くるぶしあたりまで足がめり込んでしまうなんてこともありましたよ。そんな時は,「うわー,これ,牛の糞やないか!」ということで,あわてて足を引き抜いて,元いた道のところに戻ります。で,汚れた靴と靴下をみて唖然とするわけです。
どうやって家まで帰って、家でどう説明したかは忘れてしまいましたが、何度かそういうことを繰り返してましたね。
何か所もありました
もちろん,一度,そういう目に遭えば,二度目は気をつけるもんです。たしかに、同じ場所で、二度はなかったと思います。でも,その牛糞だまりは、一か所だけではなかったんですね。ちょっと、離れたところに、しれっとあったりします。
友達の中には,牛糞だまりの場所について、とても目がきくやつがいました。そいつと一緒にいると,私がそこを通ろうとすると、「おい,そこはあかんで。」と止めてくれました。持つべきものは友達ですよね。でも、いつもそいつと一緒というわけではありません。
こういう田舎の自然の姿について、学習能力が低かった当時の私は、結局,何度も同じ目に遭ったというわけです。
子供の勲章
でも,今から思えば、それも一つの勲章ですよね。当時の子供たちは、行ったことがない場所に,どんどん足を踏み入れていたんですね。当時の小学生の集団は、いわば、小さな冒険家たちの集まりでした。
ただ、あんまり頭は使ってなかったですね。ほとんど勢いだけでやっていたという感じです。でも、自然に対する感覚が鋭い子は多かったような気がしますね。大雨とか強風とか、そんな雰囲気があれば、大人に言われなくても、即座に撤収してました。(まあ、ちょっと話を盛ってますかね…。)
で,そういうのは,もしかしたら、親が見ていなかったからこそ、できたんじゃないかなと思ったりもします。もし、親が近くで見ていたら,そんなことはしなかったんじゃないかと思います。
親の目
やっぱり,子供からすると、親の目というのは気になるものですよね。それに,親の方でも、もし子供がそんなことをしようとしたら、絶対にやらせませんよね。「危ないからダメ!」それで終わりです。
そういう意味では,当時の親たちは,ほったらかしでしたね。なかでも、子供の遊びについては,本当に放任だったと思います。まあ、山の中を走り回るくらいしか遊びがなかったというのもありますね。テレビゲームもないし、スマホもありません。遊びのために、お金を使うこと自体、ほとんどなかったと思います。
そんな子供たちが、お金を使うとしたら,遊び疲れて、のどが渇いた時に、その町で1軒か2軒しかない「よろずや」(駄菓子からジュース,生活用品など何でも売っている店のこと)で「キリンレモン」や「ファンタ」を飲むくらいでしたね。
子供たちのお金の使い方
今なら、小学生でも、自販機で簡単にジュースは買えますね。でも、めったにお金を使わなかった当時の子供たちにとっては、ジュースを買って飲むことは、とっても高い買い物だったような気がしますね。いくらだったか、記憶が定かではありませんが、おそらく50円もしなかったと思います。
それに、そんな「よろずや」も、店番がいなくて、ほったらかしの時間帯が、時々あるのですが、万引きとかはなかったですね。
昔の田舎の風景
というのも、町の中に,お店が1軒とか2軒しかないわけです。そんな小さな町ですから、店のおばちゃんは,子供たちの顔をみんな知っているわけです。だから,悪いことは出来ないというのもありましたね。何か子供たちの様子がおかしいと,親に連絡がいくような感じになっていたんでしょうかね。
まあ,今から思えば,夢のような世界です。なんとなく町中の親たちと子供たちがゆるーくつながっているような感じですね。でも,そんな町が、50年くらい前には,普通にあったんですよね。
その当時と今と、どちらが良いとか良くないとか,そんなことをいうつもりはありません。どちらにも良いところ、良くないところがあります。
お金がなくても面白かった
ただ,当時の子供たちは,お金を使わないで、今の子供たちが経験できないような面白い経験をたくさんしていたような気がしますね。
世の中の便利さが行き着くところまでいったら,案外,50年前,いやそれ以上前の日本の田舎のような生活が好まれる時代がやってくるのかもしれませんね。
最近、散歩で、少し田舎の方を歩きました。その時に、昔の田舎のことをふと思い出したので、書いてみました。
ムッシュスカラー
PS:今回のように、昔のことを思い出して懐かしむことはあります。ですが、50年前に住んでいた町にあえて行こうとは思いません。思い出は思い出のままでおいておく,それでいいんじゃないかと思います。若い時にあこがれていた人を若い時のままの姿で記憶にとどめておくのと同じことですね。
PPS:お金がなくても面白かったですが、もちろん、お金があるにこしたことはありません。