昭和から平成にかけてのテレビ番組で、大橋巨泉さんの司会で「クイズダービー」というのがありました。(若い人は知らないですよね…。)その中で、たぶん竹下景子さんだったと思いますが、「三択の女王」と言われていました。3つの選択肢から正解を選ぶ「三択の問題」の正解率がずば抜けて高かったんですよね。
なぜ、そんなことを思い出したかというと,世の中の雰囲気ですね。
何となくですが,最近は、世間で(会社でも?),自分の生の意見を求められるというよりも、三択のように、事前に準備された回答があって、その中から選ぶだけのことが多くなっているような気がしているからです。試験でいうと記述式よりもマークシートという感じでしょうか?
そして,その究極は二択、つまり「右ですか、左ですか?」というような質問です。あなたはそんな雰囲気は感じませんか?そんなことを思っているのは私だけでしょうか?
あなたはどう思いますか?
この「あなたはどう思いますか?」という問いかけだと、わりと自由に自分の意見が言えそうな気がします。ですが,「右ですか?それとも左ですか?」だと、右か左かだけ答えて、それで終わりってなりそうな気がします。気が弱い人は、それ以上の、自分の生の意見が言いにくいのかもしれませんね。
で,この「右ですか?それとも左ですか?」という、二択の質問に出くわす度に感じることがあります。
それはどういうことかというと,「その回答は右です。」とか「その回答は左です。」で答えられるほど、現実の世の中の問題は簡単じゃないでしょうに、ということです。
たいていの問題は,いろいろな条件が複雑に絡み合っています。きれいに、スパッと割り切れるようなことの方が少ないと思います。
そんな簡単には答えられない
もし、「右ですか、それとも左ですか?」と聞かれた時に、正直に答えるとしたら、
「うーん,その問題なら,右の部分もあれば,左の部分もあります。また,その右の中にも左の部分があります。で,この左という中にも右の部分があって、うーん、やっぱり,一言では難しい…。」
というようなわけのわからない回答になってしまいます。
でも、たいていの場合,それが真実だと思います(たぶん)。
でも、もし、私が,今の社会のなかで,こういう回答をしたとしたら、「はっきりせんかい!」とおこられることの方が多いんでしょうね。
はっきりせんかい!
で、この「はっきりせんかい!」に見事に答えてくれるのが、テレビ、新聞、週刊誌,ネットなどのメディアなのかもしれません。
こういうメディアの見出しは,たいてい、短くて、わかりやすく、断定的で威勢がいいです。地下鉄の車内の週刊誌の中吊り広告など、すごいですよね。
私たちが「この問題は本当に大変だよなあ。」なんて考えている問題について、一刀両断で「これが答えだ!」みたいなことが書いてあります。そんな見出しを見ると、「わあ,この記事、自分の知りたいことが書いてありそうじゃん。読んでみようか?」ってなりますよね。
もし、この見出し広告が,上に書いた私の回答のように
「この問題については、こうだという意見もあれば、違うという意見もある。それで、その中の違うという意見の中にも、実は同じところもあるという意見もあって…。」
なんて、こまごまと書いてあったりすると、
「あーっ、めんどうくさっ!こんなん読んでられんわ!」
ってなるわけです。
こんなん読んでられんわ!
そんな広告では、視聴率や売り上げが上がりませんね。
ですから,メディアの広告,見出しは、短くてわかりやすいのが良いとされています。そして、話としても面白くしています。その方が、視聴率、売り上げがあがるからです。
よくよく考えれば、当たり前の話なのですが、人っていうのは、ついついそういう簡単な話に引っ張られてしまって、現実を見なくなってしまいがちです。
このあたり、世の中が厳しくなるほど、気を付けていく必要がありそうですね。
ということで、今日も最後までお読みいただきありがとうございました。
ムッシュスカラー
PS:ようやく緊急事態宣言が解除されて,何となく街も元気になってきたような気がしますね。リモートではなくリアルで会えることのうれしさを感じている,今日このごろです。
PPS:実は、最初に書いた原稿は、このブログの2倍くらいの長さでした。でも、読み返した時に、さすがに「長っ!」と思ったので、半分以上削除しました。テレビや週刊誌の記事のように、話を短く、わかりやすく、かつ面白くというのは本当に難しいです。あらためて実感しているところです。