わかりやすさのメリット、デメリット

「わかりやすい」というのは
とても大切なことです。
特に、人に何かを伝えたいという場合
「わかりやすさ」というのは、
まず第一で、優先されることだと思います。

ただ、一方で、この「わかりやすさ」
というのは、常にリスクも含んでいます。

「わかりやすさ」を追求するあまり、
その中に含んでいる大きなリスクを、
知らない間に、あるいは意図的に
無視していることがあり得るからですね。

最近、よくネットで目にする
いわゆる「切り抜き」動画は
その典型的なものでしょうか?

たとえば、長い演説のごく一部を
数秒だけ切り取って動画としてアップする。
よくあるパターンです。

「わかりやすい」
「感情をゆさぶる」
そのような部分だけを選んで、
抽出して伝えるわけです。

「わかりやすさ」は宣伝の王道

この手法は、宣伝の場合の王道です。
人に何かを伝えたいなら
誰でも実行する宣伝手法です。

当然のことながら、この手法は、
これまで、テレビのニュース報道などでも
また、新聞の記事でも、
当然のこととして行われてきました。

たとえば、1時間の取材、収録の結果、
実際に放送されるのは10秒というやつです。
「あれだけ取材して、放送はこれだけかい!」
と、一般の人は感じますよね。

でも、それが、報道の世界の
普通の形というわけです。

その10秒を選ぶ場合には、
「わかりやすさ」
が優先されると思います。

でも、そうではなくて、
全体の一部を切り取ることで
意図的に、
本来の趣旨とは異なった趣旨を、
視聴者に伝えるという場合もあります。

偏向報道の問題点

最近では、偏向報道として
批判されている手法ですね。

うそはついていないけれど、
大事なところを伝えていない、
枝葉の部分の揚げ足取りをする、
というタイプの報道です。

最近の情報環境では、
そのようなケースも
想定しておかないと
判断を誤る可能性があります。

もちろん、全体の情報を
自分で把握したうえで
自分の判断で、その一部を切り取る、
それなら差支えないと思います。

一方、全体を知らないで、
「わかりやすい」という理由だけで
一部の切り取りの情報だけで
納得してしまうのは危険です。

わかりやすいものに飛びつく

人というのは勝手な生き物です。
「わかりやすい」ものには飛びついて
「複雑なものは避けたい」という気持ちが
おそらく誰にでもあります。

無理にでも、目をつむってでも
「わかりやすいもの」
求めてしまうんですよね。

「考えることが嫌だ」ということで
考えることを省略して
「わかりやすい」情報だけで
物事を判断していくのはとても危険です。

「わかりやすい」というのは、
とても大切なことです。
ただ、現実の世の中は、
それほどわかりやすくはありません。

一般的には、素晴らしいと言われている
「わかりやすさ」のなかに
内包されているリスクについて
あらためて考えてみることは
とても大切なことだと思います。

 

ムッシュスカラー

 

PS:「一言で言えばどういうことですか?」と聞かれて、一言で答えることができて「ああ、わかりやすい」と褒められたとします。だとしたら、「わかりやすさ」から言えば、その一言は最高の一言です。ですが、その一言だけしか聞かなかった人にとっては、様々な背景情報、詳細情報がわかりません。その一言だけですべて判断してしまいます。となれば、やっぱり危険です。

PPS:報道では、限られた紙面や、限られた時間で、情報を集約して伝えなければなりません。となると、どうしても「わかりやすさ」を優先して、複雑な多くの情報をカットしてしまうことになります。当然ですが、そこには限界があります。すべての情報を100%伝えることは不可能です。つまり、報道には、常に潜在的なリスクが含まれているということになります。

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